2014年6月1日日曜日

「政治は特別な活動ではない」という本を書きました。


 このたび、明石書店さんより、新著を上梓する僥倖をいただきました。タイトルは『ええ、政治ですが、それが何か?』です。

 私は、これまでに広い意味で政治に関する一般書を数冊書いてまいりました。『言葉が足りないとサルになる』(亜紀書房)では、「政治以前の言葉と人間の思考の関係を、『静かに「政治」の話を続けよう 』(亜紀書房)では、政治を語る15の言葉の切り分けを、それぞれ志向して来ました。
 今回の愚著は、その中間に位置する、すなわち正面から「政治とは何か」という問いに答えようとするものです。「何か?」という問いからは、本質を問うというニュアンスが濃厚に感じられますが、この本で私が目指したのは、一言で表現すれば以下のことです。

 「政治を特殊な人々による特別な活動と決めこまず、各々の関心と切実さに応じて、世界を理解する価値観を言葉で他者に伝えんとする者は、すべて政治的な人間であり、それは人が他者と共に生きることと同義である」。

 「それはおかしい」、「こんなことは受け入れられない」、「あんな人に好きにさせてはならない」、あるいは「そういうメッセージを送りたい」、「こんな世界を皆と共有したい」、「あの人を皆に知らせて応援したい」・・・これらのことを言葉を通じて他者に伝える行為はすべて「政治」です。

 一見、政治にかかわる言葉がたくさん行き交っているように見えても、じわりじわりと物を言うことが萎縮し、上っ面のパッションや大雑把な思い込みによる、政治に関する粗暴な言葉がまき散らされているこんな時代だからこそ、「政治は特別な活動ではなく、最後まで言葉で自分の世界観を部分的に開示することである」という理解で、多くの人々の言葉を引き出そうと思いました。

 勇ましい言葉で大雑把に世界を語る政治家にぶら下がるのではなく、関心と切実さに応じて自分も舞台で踊る役者と自覚し、人々を勇気づけるメッセージを発してもらいたく、この本を書きました。

 一人でも多くの皆さんに、私のメッセージを届けたいと思います。

 よろしくお願いします。

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以下、詳細な目次です。



『ええ、政治ですが、それが何か?』


はじめに


第Ⅰ部 出発点を確かめる――政治的人間の諸条件

1.政治の味方をしてみたい
 ○私たちはすでに政治的である
  何とも可哀想な政治だこと
  政治をめぐるたくさんの“K”
  少し考えればさほど特別なことでもない政治
  誰もが政治の舞台にあがる役者である

2.政治を考える大づかみの定義
 ○不完全な私たちが価値を選択して伝えるということ
  統一的定義が存在しない「政治」
  政治を生きる人間に与えられた条件と限界
  国籍を選択するのは「政治的」判断である
  ランチメニューを選択することとの決定的な違い


第Ⅱ部 思い込みをとく――政治の4Kからの解放

1.政治は暗くて汚い? 4Kの1
 ○命と嘘と政治
  政治は暗くて汚いのに週刊誌はなくならない
  政治は「意に沿わない人たち」を生み出す
  政治はすべての問題を扱わざるを得ない
  政治は道徳と比較されてしまう
  「嘘はつけない」と辞めた女性閣僚
  立法府のメンバーと運動家の違い
  特別の基準が必要な政治家
  それでも残る「嘘」の問題

2.政治にはカネがかかる? 4Kの2
 ○カネで何が失われるのか?
  いったい何が本当は問題なのか?
  真面目に議員をやれば普通にこれだけかかる
  まだまだかかる出費
  「カネ」ではなく「ヒト」がものを言わねばならない
  昭和の噂話
  カネで動いて言葉が失われる地獄

3.政治は偏っている? 4Kの3
 ○無色無垢の安全地帯は存在しない
  この世に政治的中立地帯などは存在しない
  両端次第で真ん中はいかようにも変わる
  メディアは完全なる公平など実現できない
  「中立性=公共性=非政治性」という誤解
  普通の人は「特定の思想」などは持たないという前提
  正邪と真善美の基準を体現する「お国」という考え
  政治的判断とは「国家の判断」のこと
  「投票しないこと」=「脱政治」ではない

4.政治なんて関係ない? 4Kの4
 ○政治とのかかわりと政治参加のヴァリエーション
  関係の自覚と「切実さ」
  政治と個人のかかわり方には9つのパターンがある
  政治は町会や職場や教室にもある
  政治エリートとの関係をどう考えるか
  政治エリートをきちんとフォローするという間接的コミットメント


第Ⅲ部 イメージを広げる――あのときのその人たちの格闘

1.政治とは「正しい世界を作ること」である
 ○正義の実現としての政治
  「正しい世界」のための政治
  古代アテネの理念とソクラテスの死
  プラトンがたどり着いた正しいアテネを作る「哲人王」という発想
  「ないけれどあるもの」というイデア論
  長く続いた黒人差別の克服
  ブラウン判決と公民権運動
  差別と貧困という宿痾との闘い
  「正義の実現」という視点の危うさ

2.政治とは「自分で秩序を作ること」である
 ○作為としての統治
  政治的秩序とは何か?
  「神の創造物」から「世界にはたらきかける個人」へのイメージ転換
  戦国イタリアとマキャベッリの苦悩
  『君主論』に託した政治の本質
  原発をめぐる政治をマキャベッリならどう見るか
  現実を動かすための知恵と工夫
  自己肯定と他者への信頼がリアリズムを支える

3.政治とは「自分たち自身を支配すること」である
 ○自治としての政治
  矛盾する二重の立場を生きること
  市民革命と長い習慣の終わり
  不条理を受け入れる唯一の条件は「合意」である
  ホッブス:人間は最後まで殺し合わないように最高権力を約束して作る
  ロック:人間は公平な利益の調停人になれず最高権力を約束に基づいて作る
  ルソー:人間は契約し己を全体に譲渡しみんなと一つになり真の自由となる
  合意には必ず無理が含まれているから約束は定期的に確認されねばならない
  自治とは覚悟を持って失敗を振り返る学習と訓練である

4.政治とは「戦いの勝者による支配」である
 ○闘争としての政治
  有無を言わせぬ原理
  二人のカールとその政敵
  根本から相容れない者同士としての階級
  労働者を懐柔する資本家
  本当の政治とは社会基盤をめぐる闘争である
  政治的なるものとは「友敵関係」である
  独裁擁護とその政治的帰結
  調停し得ぬ対立
  二一世紀における負の遺産

5.政治とは「これが現実だとさせること」である
 ○現実観の統制としての政治
  言うことのきかせ方――広義の権力
  人はなぜ自発的に支配を受け入れるのか
  民主政治における自発的参加と関与
  現実という化け物
  言葉が減らされた世界を描いた『一九八四年』
  直面する「現実」と政策判断
  「原発が止まると日本が止まる」という現実認識
  最低コストを可能にする「沈黙の調達」


第Ⅳ部 政治を救い出すための言葉――振り返りと未来へのまなざし

1.政治を立場に応じて使いまわす
 ○私たちにできることとできないこと
  政治の言葉を増やしイメージも増やす
  イメージが増えるとは現実が増えること
  それぞれの居場所で考える
  頑張ればできる「呼びかけ」:「動く羅針盤になる」ものとしての政治
  少し頑張り「友人を作る」:「仲間作り」としての政治
  主体的には動かないが最悪をさけるために「力を貸す」:「力添え」としての政治
  何もできないが「居合わせ見守る」:無力な者ができる「励まし」としての政治

2.主体的選択により生まれるもの
 ○自分の頭で考えて決めて覚悟すること
  「選んだのだから引き受ける」という覚悟
  「おまかせ」時代の終わり
  「選択」をせずなし崩し的に流された戦争指導者たち
  「政治的意志」の自覚も「責任意識」もなかったエリートたち
  政治的意志とリアリズムがもたらすもの

 おわりに
 より深く政治を学ぶためのブックガイド
 あとがき